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着物の決まりごと

熊本の着物仲間 粋恋亭の主宰者寧音さんが
ご自身のHP「朝顔の間」で書かれていたエッセイの中の
「正しい着付けって何?」に共感した事柄について書きます

着物に目覚めて間もなくのころ まだ独学で着物を身に纏い
悪戦苦闘していたあたしにとって参考となる本は 茶道関係の教則本や
「美しいキ○ノ」や「き○のサロン」と言った
正統派ゴージャス志向の本しかなく 
それらには一様に 着物着用の際は白衿・白足袋が原則で
ピアスやマニキュアなどもってのほか と書かれていたものだった
他に手本とする本もなく そのころは周りに着物を常着にする人も
殆ど居なくなっていたので ただひたすらに書いてあることを信じて
間違いがないようにと 細心の注意を払って着ていた着物は
とっても気疲れのするものだった

そんな時期に 勤めていた会社の創立90周年のパーティーが
某ホテルで開催されることになり その勤務先がアパレルの卸会社であった
にもかかわらず総務部所属の女子社員は受付・案内などの役を担うため
”会場が華やかで格が上がるように”
できるだけ着物を着てくるようにとの要請がなされた
それは会社の前身が呉服卸だったことへのこだわりであったかも知れない

さて ちょっぴり着物に興味が出てきたとは言え まだ人様の前には
着て出られるほど 着付けにも自信はなく
ましてや何をどう組み合わせて着て行ったら良いのかもわからず
こんな時に唯一相談できるのは 実家で同居していた伯母ひとりだけ
伯母はすぐさま母の箪笥をチェックし あたしに似合いそうな
付け下げと袋帯(その当時のあたしは名古屋帯と袋帯の違いすら
わからないレベルだった^^;)を取り出し それに合いそうな小物を
スイスイとコーディネートし始めた

伯母が選んでくれた小物は 派手な刺繍半衿であったし
「この色に合うようなマニキュアは持っとーね?」と聞き
「ぶら下がるとはいかんけど 光るピアスが華やかで良かよ☆」と
アドバイスをしてくれた
「え゛ーーーーっ!!衿は白じゃなからんといかんちゃない?」
「ピアスやらしたらいかんちゃない?」と こぼれ落ちんばかりに
目を見開いて質問するあたしに一言

「誰が決めたとね?そげんこと」

その時に伯母が説明してくれたのは そのパーティーの前に
記念式典が厳かに行われるようであれば 白衿・白足袋が好ましいことや
お茶席などでは器に傷が付くかもしれないという明確な理由があるので
指輪ははずすこと などを教えてくれた上で
普通のパーティーではそげん堅苦しく考えんでお洒落しても良かとよーと
にこにこして言ったのでした

伯母は大正7年の生まれなので 戦前はずっと着物が常着であった世代
「娘の頃は着物にブローチを付けたり ハイカラなカチューシャで髪を
纏めたりしたものよー♪」と なんとも自由にお洒落に
着物を楽しんでいたらしい 何しろ袴にブーツを履くいわゆる
ハイカラさんと呼ばれた本物の世代だ

そしてこの世代の人たちは 失礼なお直しおばさんではなく
とても寛容な目であたし達を見守り そして必要に応じてアドバイスをし
暖かく新着物世代を育ててくれている

ここ数年 着物を新しいファッションアイテムのひとつの選択肢として捉えて
自由に着こなす人たちも増え そんな時代に添った着物関係の本も
たくさん出回るようになってきた 
それに伴って最低限の着物の決まりごとがわからないまま 
場にそぐわない着こなしをしている人を見かけることも少なくない 
これはとても損なことだし ちょっと残念な傾向
「好きなものをお洒落に着て 何がいけないの?」と
言いたいかもしれないけれど 独りよがりでは通用しないこともある

冒頭で紹介した寧音さんのエッセイの中で とってもわかりやすく
表現されているな~と思ったのが 
先様のメンツが絡む礼装(冠婚葬祭や茶道など)
このように 主催者・招待した側の立場や会の趣旨によっては
自分の着たい着物より 相手に対して失礼がない着物であることが
最優先になる場がある 
特に式と名の付くところに出るときは
それ相応の礼を尽くした装いで出席する これは洋服でも同じこと
叙勲の披露や結婚式に招待されれば 男性ならタキシードであったり
女性ならゴージャスなドレスであったりするのが礼儀

着物をあたらしく日常の生活の中に取り入れて 楽しんで行こうとしている
新着物世代のあたしも こう言った最低限のルールをきちんと学んだ上で
自由で豊かな着物ライフを送りたいと思っているので
同じく新着物世代の人たちも こんな決まりごとを学ぶことの大切さも
忘れないでいて欲しいし
着物のスペシャリスト(と思い込んでいる頭のカタイ人々含む)の方々も
目くじら立てずに 暖かいまなざしで見守って下さることを願っています

by fuuki-no-botan | 2005-01-22 18:31 | 着物への想い